第9地区
人の感性は千差万別。巷では好評であるこの作品、正直私はダメだった。もし、本作の根底には人種差別等の社会風刺的なテーマが流れていると言われたら、尚更頭を悩ませてしまう。決して悲愴感あるビジュアルを期待していたわけではないけれど、虐げられる者=弱者の図式が明確ではなく、感情移入出来なかった。冷静に考えれば、人間よりエイリアンの方が、武力は圧倒的に上なのだから。彼らが人間に半ば強制的に保護、収容されていたのは、発見時に衰弱していたからであって、その後回復しても現状に甘んじているのが、どうにも不可解だ。バトルシーンを強調するだけの道具にしか思えず、昆虫型にしたのもそのせいだろ、と訝ってしまう。侵略が目的で飛来したのではないにしろ、彼らの科学力は地球人も重々理解しているのだから、ブレーンとして人間社会に招き入れられるヤツがいたりしても面白かったんじゃなかろうか。折角高知能エイリアンを配しているのに、勿体無い限りだ。80年代だっただろうか、カスールをスクリーンで見られる!という理由だけで観に行った『エイリアン・ネイション』。当時でさえエイリアンのキャラクター性はしっかり確立されていたし、気持ちの良い意匠ではなかったけど、知的生命体であることは誰もが一目で理解出来たはず。また弱点を持たせることで、「人間よりやや劣る存在」として描写されていた。「いつ反旗を翻すか判らない」、そんな恐怖感が欲しかった。
後半の展開は、とてつもなく強引に思えた。ちょっと居眠りしている間に、別の映画が始まっていた、みたいな感覚に陥ってしまうくらいだ。あのアーマード・コアはないでしょ、ホント…。それから、カプセルに入った意味不明の液体。あれは万能液なんだろうね、きっと。存在目的と作用と効能に、果てしなく悩んでしまうミラクルアイテムだけど、これは気にしない方が無難そうだ。この作品をブラックユーモアとして見るべきであったのなら、私の見方が最初から間違っていたことになる。あ、そうなのかな?何か合点がいかないなあ。