クイック&アンデッド-未来世紀ニューウエスト-
シャロン・ストーンがウエスタンに初挑戦!なんて話題は、ついこないだのような気がしていたが、既に13年も前なのね…。恐るべきスピードで時は流れ、『クイック&デッド』もすっかり懐かしの作品として、記憶の中にファイルされているわけだが、今回は引き合いに出す必要も全くなくて、単にタイトルから失笑を誘う材料に過ぎないことを、最初にお断りしておこう。
まあ今更「クイック&デッド」を捩ったタイトルをつけて、一体どれだけのセールスポイントに繋がるんだろうと、馬鹿馬鹿しいというより腹立たしさにも似た感情が沸いて来たのだけれど、なんとコレが原題だったんだから、そりゃシャロンの皺も増えるってモンだ。これで監督がサム・ライミなら、シャレが効いててサイコーなんだけどねぇ。じゃあそれなりにパクった効果が現れてるのかというと・・・メンドくせーなあ。
ストーリーを掻い摘んで話すと、化学兵器の実験によって荒廃してしまった某国の某所で、アンデッド、いわゆるゾンビが大量発生(ちゅーか死人が蘇生)して、僅かに生き残った人間を襲う旧態依然とした設定を基本に、賞金稼ぎと自称する連中がゾンビを狩りながら換金ポイントを目指す。賞金は切り取ったゾンビの「指の数」で査定されるってことで、当然そこには醜い争奪戦が展開すると(ギヤマンの鐘を取ったり取られたりする、伊上脚本をちっとは見習えよ!)。一匹狼のガンマン風情の男と、反目するバウンティー・ハンターグループとの騙し合い等はマカロニ・ウエスタンのそれだが、ロケの大半が辺境地であること、画面の作り込みが稚拙過ぎることなどにより、デッド・スペースが気になってしょうがない。日本の80年代インディーズ・ムービー並のクオリティ、と言ったら怒られるか?誰に?いや、だからインディーズの監督さんに!
そもそもだ。ゾンビの指が換金可能なら、何も他人の収穫を奪い取る必要はないわけで(その辺にゴロゴロ死んでるし)、きっとそこにはグループのボスのプライドと嫉妬(メンバーに女性が一人いて、どうも昔は主人公と良い仲だったっぽい。それを連想させる台詞が後半に出てくるが、明確な説明は一切ナシ)が渦巻いていて、その指導者らしからぬ女々しい感情が、よりスケール感をこじんまりさせてしまったのだろう。人類がほぼ全滅という事態において、色恋沙汰にムキなっている連中は可笑しかろう。と言うより、そこは描かなくていいんじゃないの?とにかく生き延びることを優先しなさいよ、皆の衆!
それに賞金稼ぎたちが集結するポイントは全員が知ってるわけだし、最終的にそこでエンディングを迎えることも労せず読めるわけ。当然そこにもゾンビがうじゃうじゃとひしめき合ってるんだから、どうせ悪いヤツが真っ先にヤラれちゃうんだろなあ。あ、ほらヤラれた!みたいな、どこまでもストレートしか投げられない脚本家にツッ込んでる自分にも、ほとほと愛想が尽きそうだけど・・・・・。
え?見ドコロっスか?ないよ、そんなの。無理矢理挙げるとすれば、主人公が冒頭で何やらアンプルらしきものを自分に注射してたんだけど、どうもそれが「ゾンビの血」らしくて、噛まれた時にアンデッド化しないために常々免疫力をつけていたらしい。理屈としては破綻してるけど、発想はちょっと面白い。鬼太郎はそれで大海獣になっちゃったけどね。
原題:THE QUICK AND THE UNDEAD
製作年:2006年(アメリカ)
上映時間:78分
ジャンル:ホラー/西部劇/アクション